- 『東京都同情塔』のあらすじや感想を知りたい
- 『東京都同情塔』を読んだ人のレビューが気になる
本記事はそんな方の疑問にお答えします。
芥川賞受賞作家・九段理恵の話題作『東京都同情塔』は、独自の視点から社会の「同情」や「寛容」を問いかけるディストピア小説です。舞台はザハ・ハディドが設計した新国立競技場が実現した並行世界の東京。主人公の建築家・牧名沙羅が、犯罪者への「共感」をテーマにした刑務所「シンパシータワートーキョー」の設計コンペに挑む物語は、現代社会に鋭く切り込みながらも、未来に生きる人々が抱えるジレンマを描き出します。この作品は、現代の倫理観やAIがもたらす社会的影響についても考えさせられる内容で、多くの読者の共感を集めています。
本記事では、この作品のあらすじや感想、レビューを詳しくご紹介します。
- 『東京都同情塔』のあらすじ・感想・レビュー
- 『東京都同情塔』がおすすめな人
『東京都同情塔』のあらすじ
本の詳細 | 内容 |
---|---|
タイトル | 『東京都同情塔』 |
著者 | 九段理恵 |
出版社 | 新潮社 |
発売日 | 2024/1/17 |
ページ数 | 140ページ |
Audible再生時間 | 4時間19分 |
九段理恵の小説『東京都同情塔』は、ザハ・ハディドによる新国立競技場が建設されたパラレルワールドの東京を舞台に展開されます。この作品では、犯罪者を収容する新たな刑務所「シンパシータワートーキョー(東京都同情塔)」が設計され、作中の東京は寛容な社会を目指して刑罰の概念が見直されています。物語の中心人物である建築家・牧名沙羅は、このタワーの設計コンペに参加し、葛藤を抱えながら設計を進めていきます。
「シンパシータワートーキョー」は「ホモ・ミゼラビリス(哀れな人々)」と称される犯罪者たちの収容施設であり、単なる罰のための施設ではなく、共感や許しの理念が込められています。このタワーの建設過程や、牧名沙羅が自身の信念や社会のあり方と向き合う様子が物語の軸となり、建築や人間の本質、社会的なテーマが深く掘り下げられています。
『東京都同情塔』の感想
この本を読んだ感想としては、以下のようなポイントが挙げられます。
- 「罪を裁かない塔」が問いかける共感の未来
- ディストピアとユートピアの境界
- 主人公の葛藤と人間性の探求
- 感想としての難解さと共感
1.「罪を裁かない塔」が問いかける共感の未来
『東京都同情塔』では、犯罪者に対する寛容と共感がテーマとして描かれています。都心の中心に建てられる「シンパシータワートーキョー」という施設は、単なる罰の場ではなく、犯罪者に対する理解と共感を促す場所です。この設定が、社会における「許し」の意味や人間性について、読者に深い問いを投げかけています。
ディストピアとユートピアの境界
本作は現実とフィクションが曖昧に交錯するパラレルワールドで描かれ、読者を引き込む不思議な雰囲気が特徴です。豪華なタワーマンションが犯罪者の収容施設という斬新な設定は、ユートピアとディストピアの中間にあるような独特の世界観を生み出しています。
主人公の葛藤と人間性の探求
主人公の建築家・牧名沙羅は、「シンパシータワートーキョー」の設計を通して、自身の信念や社会における「正義」について葛藤します。彼女の心情は、作品を通じて繊細に描かれており、共感を求める施設を設計することの矛盾や葛藤が読者の共感を呼び起こします。
感想としての難解さと共感
一部の読者にとっては、抽象的で難解な部分もあるかもしれません。しかし、物語が提示する「共感と理解」のテーマは、未来に向けての一つの提言として多くの示唆に富んでおり、読み手に強い印象を与える作品です
『東京都同情塔』を読んだ人のレビュー
とある実在する街の過去と現在を未来の別の街に置き換え(シンクロさせ)ているお話?『東京』が歩んできた生い立ちが垣間観える作品。
主人公の生きづらさが痛切に伝わってきた。本書のメインテーマではないのかも知れないけれど。「自明性の喪失」という言葉が頭に浮かんだ。そこまで病的ではなく、むしろ才能なんだろうけれど。それでもやっぱり辛そうだ。同情はしないけれど。
近未来が舞台の、SF映画の様な小気味いい展開。オシャレで出来の良いエンタテインメント。読んでいて楽しい。
『東京都同情塔』はどんな人におすすめ?
『東京都同情塔』は、 以下のような人におすすめします。
- 社会問題や倫理に興味がある人:『東京都同情塔』は犯罪者への共感や寛容というテーマを扱っており、社会的な倫理問題を考えるきっかけを提供します。
- ディストピア・フィクションが好きな人:作中の舞台は、少し異なる未来の東京で、リアリティとフィクションが交錯するディストピア的な世界観が魅力です。
- 言葉や表現に関心がある人:主人公たちの内面的な逡巡が丁寧に描かれ、言葉の重みや表現の奥深さが感じられるため、文学的な表現に興味のある読者に向いています。
- 日本文化や社会に対する洞察を深めたい人:作中では、日本人の感性や言葉の変化もテーマとして扱われており、日本文化に興味がある人にとっても興味深い内容です。
- AIや近未来のテクノロジーの影響に興味がある人:物語はAIなどの先進技術が人間社会に与える影響も含まれており、技術と人間性の関係に興味がある人におすすめです。
『東京都同情塔』:まとめ
『東京都同情塔』は、未来社会を舞台に、共感や寛容という普遍的なテーマに深く迫る作品です。九段理恵は、サラの葛藤を通して、読者に「人間性とは何か」を問いかけています。この小説が問いかけるのは、ただの未来の問題ではなく、今を生きる私たちの現実でもあるのです。犯罪や社会の寛容性、さらに言葉の持つ力について興味がある人は、ぜひ手に取ってみてください。この作品は、心に残る重厚なテーマをもつ現代文学の一つとして、強くおすすめできる一冊です。