【あらすじ・書評】『DTOPIA』安堂ホセ著 :第172回芥川賞受賞作

  • 『DTOPIA』のあらすじや感想を知りたい
  • 『DTOPIA』を読んだ人のレビューが気になる

本記事はそんな方の疑問にお答えします。

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こんにちは!今回は、第172回芥川賞を受賞し大きな話題を呼んだ安堂ホセさんの小説『DTOPIA』の書評をお届けします。なぜこの本を手に取ったのか?それは、恋愛リアリティショーをモチーフにしながら、私たちの社会に横たわる根深いテーマを扱っていると知ったからです。性自認や人種、植民地主義、そして「暴力」とは何か。本作は、私たちが普段意識しない「思い込み」に気づかせ、読後に強烈な問いを残します。読み進めるほどに揺さぶられる、まさに体験する小説でした。

本記事では、この作品のあらすじや感想、レビューを詳しくご紹介します。

本記事でわかること
  • 『DTOPIA』のあらすじ・感想・レビュー
  • 『DTOPIA』がおすすめな人
目次

『DTOPIA』のあらすじ

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本の詳細内容
タイトル『DTOPIA』
著者安堂ホセ
出版社河出書房新社
発売日2024/11/1
ページ数160ページ
Audible再生時間00時間00分

物語の舞台は2024年、フランス領ポリネシアのボラボラ島。そこで、恋愛リアリティショー「DTOPIA」の新シリーズが開催されます。世界各国から集められた10人の男性たちが、ミスユニバースと呼ばれる一人の女性を巡って競争を繰り広げるという設定です。しかし、番組のルールは早々に崩壊し、参加者たちの間には予期せぬ事態が巻き起こります。物語は、Mr.東京である井矢汽水(キース)を中心に進行し、彼の過去、特に幼馴染であるモモとのエピソードが重要なパートとして語られます。性自認、人種、植民地主義の歴史など、様々な社会的な問題が絡み合いながら、登場人物たちの複雑な関係性や内面が描かれていきます。視聴者が自由に映像を編集できるシステムも登場し、リアリティショーという枠組み自体が問い直されます。これは単なる恋愛ゲームではなく、現実世界の縮図のような場所で、人間の欲望や暴力、そして関係性が剥き出しにされる物語です。

『DTOPIA』の感想

この本を読んだ感想としては、以下のようなポイントが挙げられます。

本作を読んで最も印象に残ったのは、様々なものが「編集」によって切り取られ、歪められていく様が描かれている点です。リアリティショーの映像が制作者や視聴者によって自由に編集されるだけでなく、登場人物の人生や人間関係もまた、語り手の視点によって「編集」されたものとして提示されます。特に、語り手であるモモが主人公のキースを終始「おまえ」と二人称で呼ぶスタイルは、読者である私自身にも向けられているように感じられ、物語への没入と同時に突き放されるような不思議な感覚を覚えました。まるで「おまえはこれをどう見るんだ?」と問いかけられているかのようです。

また、フランス領ポリネシアでの核実験と、それに伴うフランス軍兵士と現地女性との関係から生まれた「デト兵」の伝説に触れる部分は衝撃的でした。愛と暴力が分かちがたく結びついた歴史の一端が示され、この小説の根底にある「暴力から暴を取れないか」というキースの問い に深みを与えています。植民地主義の残滓が残る島は、まさに世界の縮図のように感じられました。

さらに、私自身が『DTOPIA』を読み進める中で、登場人物や設定に対して無意識のうちに抱いていた「思い込み」に気づかされたことも大きな収穫でした。例えば、作中のミスユニバースがブロンドの白人女性として描かれていることや、参加男性の出身都市、そして後から登場するモモの性自認など。自分がメディアや社会によって刷り込まれたステレオタイプにどれだけ影響されているかを実感しました。

この小説は、明確な答えや着地点を示しません。しかし、その代わりに、読者である**「私たち」**に対して、様々な問いや違和感を突きつけてきます。難解だと感じる部分もありましたが、読む前と読んだ後では、現実の見え方が少し変わったような、心を揺さぶられる読書体験でした。

『DTOPIA』を読んだ人のレビュー

Amazonレビュー

自分は小説の好き嫌いが激しいのですがこれは好みに合いました。
一作目は三人称神視点、二作目は一人称、今作は二人称と挑戦しとるね。

ミスインターナショナルって全ての国の男が求める最高の美女ってことかな〜
男根の精嚢を切除する事件と、意味不明のパーティにはどんな関わりがあるのかしら
結局どんな美人でも選ばれた男より、召使いでも下男でも好きな男に身体を許すんだよ

いやー若い人の作品は新鮮でいい。なぜかアメリカングラフティの映画みたいだった。暴力。
マィノリティ。なぜか社会の縮図を垣間見た気がする。とにかく文体が新鮮でいい。今の時代の小説だと思う。御老体には決して書けない今の空気がつまっている。宇宙人が支配しているのは本当かもしれない。芥川賞はすばらしい。
歴代の作品のすべてに価値がある。

『DTOPIA』はどんな人におすすめ?

『DTOPIA』は、 以下のような人におすすめします。

  • 話題の芥川賞受賞作を読んでみたい人
  • 恋愛リアリティショーや現代のメディアのあり方に疑問を感じる人
  • ジェンダー、人種、植民地主義、暴力といった社会的なテーマに関心がある人
  • 自身の無意識の「思い込み」や固定観念について考えたい人
  • 実験的な語り口や、読後に考えさせられる小説が好きな人

『DTOPIA』:まとめ

安堂ホセさんの『DTOPIA』は、恋愛リアリティショーというポップな入り口から、私たちの社会や人間の本質に深く切り込んでくる作品でした。読めば読むほど、常識や「当たり前」だと思っていたことが揺らぎ、自分が何を「編集」し、何から目を背けていたのかを考えさせられます。これは、単なる物語として消費するだけでなく、私たち自身の問題として受け止めるべき「問い」が詰まった一冊です。ぜひ、あなた自身の目でこの「DTOPIA」を体験し、心に残る問いを見つけてみてください。

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